2021年2月、楽天の株主になった
私は、どちらかというとずっとアンチ楽天だった。2021年1月の三木谷氏の伝説(?)の会見を聞くまでは。
楽天モバイルの条件付き無料プランの発表があったあの会見だ。三木谷氏は会見で「これが楽天の心意気だ」といった。私はこの会見のニュースを見たあと、丸1日考えて、楽天モバイルに申し込んだ。
携帯電話はすぐに届いた、と言いたいが紆余曲折あった。申込みが殺到して配送がパンクしていた。指定された日時に待っていたが届かず、連絡もない。当初予定から3、4日遅れで届いた。
それでも、rakutenhandの性能と通話料無料、1年無料、その後も1ギガまで無料は、かなり魅力的だ。その日から通話料がかからなくなったので確実に固定費が減った。固定費が減るということは経済的に豊かになるためのへの第一歩だ。
この会社は伸びる、私はそう判断した。翌日、楽天の株式を100株購入し、長期保有目的で株主になった。その判断が間違っていたら、ただ10万円ちょっとが紙くずになるだけだ。ポートフォリオ全体への影響はほとんどない。
ただ、私が楽天を長期保有するのは、ただ単に三木谷氏の心意気にほだされたからではない。三木谷氏が会社は誰のものか、どうあるべきかをよくわかっているからだ。
楽天経済圏の優待改悪は、公募増資のようなもの
楽天のサービスの改悪が相次いで発表されている。多くの人が改悪だ、ショックだ、と言っているが、今までが優遇されすぎていただけだと私は思っている。
もう少し正確に言うと、既存の楽天経済圏で恩恵を受けていた人が、今まで優遇されすぎていただけで、普通の水準になっただけだ。
これは、株式の公募増資に似ている。上場企業の公募増資が発表されると株価は大幅に下落する。これは市場が、増資により発行済株式数が増加して1株あたりの価値が希薄化することを嫌気するためだ。必然的に既存株主の価値も損なわれる。一般的に増資は、既存株主から増資に応じた新規株主への価値の移転であるといわれる。
相次ぐ楽天経済圏の優遇改悪も、既存住人から新規住人への価値の移転と考えられる。携帯電話1年無料、その後も通話料無料、一定量データ通信無料、の大盤振る舞いの原資は自然に湧いてくるわけではない。楽天はそれを楽天経済圏の既存住人への高すぎる優遇をやめることで新規住人へのインセンティブにあてる、というごくごく真っ当な経営判断をしただけだ。
これが、みずほフィナンシャルグループやANAホールディングスなどのように、たとえどんな理由があるにせよ、事あるごとに理由をつけて増資を繰り返してしまう企業と決定的に異なる点だ。
会社は、株主のものである。株主を軽視する経営は長期保有株主から信頼を得られない。逆に、短期的に儲けようとする投資家しか寄ってこない。
馬鹿げているとは思うが、一世一代の大勝負、携帯電話事業の投資のための大規模増資というのも選択肢にあったはずだ。でも、楽天は安易に増資に踏み切らなかった。敢えて、反発や離反を招く優遇改悪を選んだ。実は楽天の本当の心意気とはここにみてとれる。
長期保有目的の投資家は、会社は誰のものかを経営者がよく分かっている企業に投資するのである。