競争を降りる

この歳になると地位の差は出てくる

私は、現在、45歳だ。会社員生活も23年になる。いいか悪いか別にして、入社以来同じ会社に勤めている。今年、同期で初めて部長が誕生した。私はというと、その人と同じタイミングで30歳直前に、ともに同期でトップで係長に昇進した。それから15年たって彼我の差は歴然としている。彼は部長に昇進し、私はまだその時と同じ職位等級だ。いろいろな事情があったにせよ、これは動かしがたい事実であり、現実を受け入れるよりほか仕方がない。

よく、サラリーマンとしての先が見えてくるころ、といわれるが、目安としてはそれは同期が部長に昇進する頃だろう。やせ我慢ではなく、私が、部長に昇進した同期に嫉妬することは100%ありえない。もし会う機会があれば心から祝福できる自信がある。それだけの努力をしたのだということを認めてあげなければならない。それだけ大変な経験もして、困難を乗り越えてきたからこその部長昇進だ。

思い切って競争を降りる

このように、圧倒的な差がある場合はモヤモヤしたりはしないが、職位等級が1つ、2つだけ上とか、1つ、2つだけ下、というのは本当に厄介だ。嫉妬、というものがあることを嫌でも意識させられる。そんな自分が嫌になる。

職場でもそんな関係を抱えている。私よりも職位等級が上で、入社年次が1つ下の後輩が1年前に同じ職場に入ってきた。私の方が今の職場での経験も長いので、マネージャーの代行者順位は、私の先輩が1位、私が2位、彼が3位となっていた。それは私に対してマネージャーが配慮してのことであることは十分感じていた。その配慮にありがたいと思っていた。しかし、会社がピラミッド組織である以上、昔のような年功序列的な情けは無用だ。1年間、職位等級では下だが、代行者順位では上、という立場に妙な気分で浸っていたが、今回、思い切って自分からそれを返上することを申し出た。

マネージャーにそのことを伝えると、嬉々として、「そういう申し出があったということで、今回から変えます」と言った。ああ、やっぱり本当はそうしたかったんだけど、私の機嫌を損ねると思って、気を遣ってできなかったんだな。勇気を出して申し出てよかったと思った。でも、そんなに喜ばれると思わなかったので、複雑な気持ちになってその日1日ずっとモヤモヤしていた。

自分だってもっと上に行けるチャンスがあった。2等級上にいたのに降格された。降格されてなかったら。でもそんなこと考えたらきりがない。代行者順位を譲った入社年次の1つ下の後輩が今までよく頑張ってきて会社に評価された。ただそれだけなのだ。なのに自分は、いままで、職位等級は下だが、自分のほうが経験が上だ、自分のほうが代行者順位は上だ、と虚勢を張ってきたのかもしれない。出世競争で負けたことを認めたくないと思っていたのだ。それだけの努力をしてきたのだ、ということを素直に認めてあげなければならない。それだけ大変な経験もして、困難を乗り越えてきたからこそ現在その職位等級なのだ。

そう思うと、ひとまず自分のことは置いておいて、彼を尊敬する気持ちが出てきた。すると、不思議なことに、すーっと心が楽になった。職場で話しかける時も緊張しなくなったから不思議だ。

人生は勝ち負けではない。もう過去のことは忘れて、「自分のほうが」とか「自分だって」と虚勢を張る競争から降りようと思う。そのうえでまだ本当に認められたい気持ちが強いのであれば、自分を変えるのではなく、自分を活かすための正しい努力をして、今、自分が立っているところから新しくやり直せばいい。その方が、自分らしくて楽しい人生になるはずだ。

 

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