降格の理由を聞く
降格の理由は、ものすごく、くだらないものだった。こんなことで6年以上も悩んでいたのが馬鹿らしくなるような理由だった。
当時の単身赴任先で昇格し、赴任前の事業所に戻って正式配属された瞬間に降格されたのだ。理由は、赴任前の事業所に配属される人(管理職以外)のランクのレンジが決まっていて、例えばそれがランク1からランク4だとしよう。どんなに優秀でも管理職以外はランク4が最高位となるらしい。
私は、単身赴任先で、この例に当てはめてみればランク5に昇格していた。それが赴任前の事業所に戻るとランク1からランク4に処遇されると決まっているので上限のランク4に自動的に処遇される、というわけだ。
理由を聞いてどっと疲れが出た
降格されたのは、能力が見合わない、実績が見合わないからだと思っていた。まさか勤務する事業所が変わったから降格されたとは思いもしなかった。
意志は有限だ、と「がんばらない戦略」に書いてあった。やる気も有限だ、と「あやうく一生懸命生きるところだった」に書いてあった。
この6年間、能力や実績をキャッチアップしようとして、本当にたくさんの意志の力とやる気を無駄にした。そのことを率直に認めよう。ただ降格前に戻したいと思っただけだ。そりゃあいくら能力や実績を上げようと努力しても戻るわけないわ。努力の方向が間違っているんだから。だって、降格された理由が能力不足や実績不足ではなく、勤務する事業所が変わったからという理由なんだから。
面談中は気が張っていたが、帰ってきて一人になってロビーに置いてあるベンチに腰掛けたらどっと疲れが出て、本当に力が抜けてしまい30分くらい立てなかった。
100の努力より1の勇気
今回のことで得た教訓は、「100の努力より1の勇気の方が大事」ということだ。どういうことかというと、もし私が降格された時にすぐ降格された理由を、恥ずかしがらずに勇気を出して聞いていれば、その時点で「なら仕方ない」で終わったかもしれない。負の感情を6年以上も引きずって、憤ったり、辛い思いをしたり、恨んだりすることもなかった。降格を元へ戻そうとして無駄なやる気を出して消耗することも無駄な努力をする必要もなかった。
この教訓を残りの人生で必ず生かす。いや、今日から変える。降格されて長く辛い経験をしたのには意味があった。
「100の努力より1の勇気」
過去の降格の経験がなければ、今生で決してこの教訓を得ることはできなかっただろう。仮に今死んだとしても、この世でこんな経験をしてこんな教訓を得てきました、と言って胸を張ってあの世で報告できるくらいのレベルのものだ。(じゃあ、今度はその教訓を活かしてもう一回やってこい、と言われそうだが・・)
だから、今ならこう言える。降格してくれてありがとう。おかげでいま私は幸せです。