完結編・中小企業診断士との出会い

中小企業診断士、3年目突入の矢先

3回度目の挑戦の年になるはずだった。だった、というのは、そう、3度目の正直にはならなかったのだ。それどころか、1次試験の再受験すらできなかった。何があったのか。じっくり振り返りながら説明しよう。

TACの中小企業診断士講座の受講生交流会があってから1か月もしないうちに、突然、それは来た。異動の発令だ。それも、転居を伴う異動。東京への転勤の辞令があったのだ。全く想像もしていなかったため、慌てたのを覚えている。とにかく、まずは、赴任先の借り上げ社宅をどこにするかを決めなければならない。引っ越しの準備もしなければならない。急に忙しくなった。

TACの中小企業診断士講座は申し込み済みだったので、ちょうど東京へ赴任する日に、TACの校舎の窓口で通信教材の送付先を、赴任先の借り上げ社宅の住所へ変更する手続きをしてから、夕刻新幹線に乗り、その夜泊まる東京のビジネスホテルに向かった。赴任日までに引っ越しが間に合わなかったのだ。それぐらい急なスケジュールでの転勤だったので、転居先は押さえたものの、入居はできず、最小限の荷物だけ送って、運送会社の倉庫で預かってもらい、最初の週末に社宅のカギを受け取りに行き、荷物を社宅に届けてもらうよう段取りした。それしか方法がなかった。最初の3日間くらいは、ビジネスホテルで寝泊まりして、そこから職場へ通うという慌ただしい新生活の幕開けとなった。

赴任先の仕事には慣れず、次第に心身ともに疲弊した

慣れない東京での暮らし、それもいきなり決算で毎日10時過ぎまで残業になり、帰ってきて、夕食を準備して食べて、選択をして、風呂に入ってとやっているとあっという間に日付が変わってしまう。朝は、7時過ぎには出るようにしていたが、朝の通勤ラッシュが想像以上だった。首都圏のラッシュの混雑のすごさは噂には聞いていたが、これほどまでにひどいとは思わなかった。私が通勤に利用していた京浜東北線は、混雑率ベスト3に入るくらいのひどいものだそうだ。それが2カ月ぐらい続いて、心身ともに疲弊してきた。

いままでの経験上、ストレス解消や疲れをとるには温泉がいいと思い、意外にリーズナブルな価格設定の、温泉が湧く銭湯が近くにあることを知って、何回も通った。仕事帰りにも行ったし、休みの日にも昼間から行ったこともある。ストレス解消策として、お酒、旅行、映画、温泉、ぐらいで以前なら元に戻っていたのだが、どういうわけか一向に気分が晴れない。それどころか、朝、会社に行くのが億劫になってきた。

TACの中小企業診断士講座の教材も転居先に送られてきたが、宅配ボックスがあるはずなのに、仕事から帰ってくるとポストに不在通知表が入っている。所管の郵便局に問い合わせて、「宅配ボックスに入れてください」、というと意外な答えが返ってきた。宅配ボックスに入れたいのだが、すべて満杯で入れられないので持ち帰ったというのだ。

マンションの宅配ボックスは、大阪に単身赴任していたときも利用しており、とても重宝していたのだが、宅配ボックスが満杯などということは一度もなかった。東京のマンションでも宅配ボックスがあれば安心だ、と思っていたのになんということだ。数も大小あわせて20くらいあり、とても足りなくなるなんていうことは考えられず、どういうわけか信じられないでいたが、ようやく事情が分かってきた。

まず、住人あての郵便物自体が多いこと、さらに住人が何日も引き取りせず放置するため、宅配ボックスが慢性的に埋まっている状態であることが分かってきた。ただでさえ、仕事や職場で疲れて、帰ってきてそこから中小企業診断士試験の勉強を始めるという気力もなく、途中で、通信教材の届け先を転居前の住所へ戻した。

時々、帰省して、届いた通信教材の山を見てさらにやる気をなくし、試験どころではなくなっていた。そして、ある朝、赴任先で会社に行けなくなる。そのまま休職へ。気づいたら、中小企業診断士試験のリベンジどころではない、最悪な状況へと追い込まれていた。こうして、私の中小企業診断士への挑戦は、尻切れトンボのような形で幕を下ろすことになった。

単身赴任先で会社に行けなくなる

 

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