快進撃止まる
米国公認会計士試験を期せずして、2科目ほぼ同時に合格するという、うれしい誤算に喜んだ私は、快進撃が止まらない、翌年5月にはREGを受験して、これも一発合格、8月には最後のAUDへと一気に突き進んだ。しかし、9月に判明したAUDの合格結果は不合格。ここで快進撃が止まる。合格を確信していた私は、一瞬頭が真っ白になった。最初は、落ちて当たり前と思っていたのでが、3科目連続で合格するという快挙を成し遂げ、最後の1科目も合格するつもりでいたのでショックだった。
不合格になったのは、もちろん実力不足なのだが、あと、1科目なので、当然諦めるつもりはないが、もう一度やり直す気力が湧いてこない。少し時間を取って、じっくり取り組むか、最短で受験できるスケジュールを組んで、再受験をテストセンターで予約するか、悩んだ。休みの日に、ふと比叡山へ日帰り旅行してみようと思いついた。以前から一度行ってみたかった、比叡山の根本中堂を訪れてみた。そこで、今後どうすべきなのか、1000年以上続くとされる根本中堂の法灯をみつめながら、ぼーっと考えた。
2時間ぐらい座って休んでいるうちに、頭がすっきりしてきて、「時間をおかず最短で再受験すべき」、という考えが強くなってきた。ここで、腰を落ち着けたら勢いを失ってしまう、いままでの余勢をかって、一気に合格まで駆け抜けるしか方法はない、と感じた。かといって、再受験して落ちてしまうのでは意味がない。絶対に合格しなければならない。受験料だって馬鹿にならないのだ。当時でも1科目の受験料(日本受験の場合)は約5万円ぐらいした。時間も、お金も無駄にはできない。
出勤前のネットカフェ通い
「時間をおかず最短で再受験すべき」と決心した私は、すぐにテストセンターに予約を入れた。その時点で試験まで約2カ月しかない。前回と同じことをやっていたら同じ結果しか出ないのは目に見えている。そこで、AUDの過去問集中学習、この一点に絞って、2か月間毎日取り組むことにした。それまでの会社帰りの自習室通いに加えて、朝、出勤前にネットカフェに通って、7時くらいから朝食を食べながら、ネットでオンライン版のベッカー(アメリカの資格学校ベッカー社が提供していた、米国公認会計士受験生の多くが使っていた教材。最初は紙ベースだったが、その頃からオンライン版の提供も始まっていた。)の過去問をやる、ということも始めた。
迎えた再受験、11月に判明した結果は合格。最初の科目合格から1年、受験勉強の再々挑戦を始めてから約1年半だった。最後の4科目目の合格が分かったときに最初に感じたのは、「よかった、科目合格の期限に間に合った、無駄にならずに済んだ」ということだった。その後、だんだん喜びが湧いてきた。初めて米国公認会計士の存在を知り、資格取得を志してから、実に約15年近くの歳月が過ぎていた。