再々挑戦の日々・米国公認会計士取得までの道のり

TAC米国公認会計士講座、草野龍太郎先生の思い出

米国公認会計士の科目は、全部で4科目ある。FAR、BEC、REG、AUDだ。この4科目、どのような順番で受験してもよい。4科目一緒のタイミングで受験してもいいし、1科目ずつ、時間を空けて受験してもいい。とにかく、4科目すべて合格した時点で米国公認会計士試験合格である。働きながら受験するのが前提になっているので、社会人に優しい受験制度だ。ただし、科目合格がいつまでも有効だというわけではない。科目合格の有効期限は18カ月と決められている。だから、いつまでもだらだらと試験に臨むわけにはいかない。計画的に勉強し、効率よく試験を受験し、そして合格していかなければならない。

ほとんどの受験生が、おそらく4つの受験科目のうちFARを最初に受験すると思う。FARは財務会計に関する知識を問うもの。すべての科目の基礎的な科目であり、他の3科目でもFARの知識が前提となっている、科目横断的な問題が出題されていたため、TACの講師もそれを推奨していた。

TACの米国公認会計士講座で一番最初に受講したFAR1の講師が忘れられない。草野龍太郎先生だ。先生は、講義の合間に、実務のこぼれ話をしてくださったり、会計の本質的な理解を深めるような話をしてくださったりと、勉強を始めたばかりの受講生の興味をそそり、希望を抱かせ、モチベーションを上げてくださった。先生は、講義もわかりやすく、素晴らしかったが、講義の合間で話してくださった話も非常に参考になった。そのなかで、いまでも印象に残っている話が2つある。

1つは、「米国公認会計士試験は運転免許試験」という話だ。つまり、日本の公認会計士試験のような、相対試験ではなく、レベルに達している受験生は全員通す絶対試験だ、ということだ。本当の競争はその後の実務においてだ、ということもおっしゃっていた。2つ目は、「私は、皆さんが米国公認会計士試験に合格するかどうかなんて全然気にしていないんですよ。どれだけ早く合格するか、を気にしているんです。だから、早くテストセンターいって、とっとと合格しちゃってください。」これは、先生の受け持ちの講義が最後を迎える回の最後で、受験生に対するはなむけの言葉として贈られたものだった。いまでも先生の声が耳の奥に残っている。オーディオデータを持ち歩いて先生の講義を何度も繰り返し聞いたものだ。

科目合格の有効期限が悩ましい

先生の言葉の後押しもあって、私は、一念発起して勉強を始めた年のうちに4科目のうち、FARとBECの2科目を一発合格することができた。予想以上の成果だった。まず先に、FARに合格したことが判明し、次いでBECにも合格したことが分かった日には、本当にうれしくて、ふと、夜、京都の清水寺へ行きたくなった。夕方、大阪を出て、京阪電車で京都へ向かい、最寄り駅から清水寺の夜間拝観へいった。11月30日で、その年最後の夜間拝観の日だった。その年の春、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、TACへ受講料を振り込んだのだ。そして今、その結果が成果として半分現れている。

この時、私は、確信した。これはいける、と。

そう確信したと同時に、うれしい誤算が生じた。科目合格の期限である。科目合格の期限は、先述の通り18カ月である。となると、18カ月のうちに残りの2科目をパスできなければ、先に合格した2科目の合格は無効になる。取り直しだ。できないことはないが、そうなれば、モチベーションはかなり下がるだろう。それにかかった、労力、時間、すべてやり直すことになるのだから、モチベーションの低下は目に見えている。であれば、選択肢はただ一つ、残りの2科目を必ず18カ月以内に合格する。いや、18カ月といわず、できるだけ早くに合格する、これしかない。こうして、自分の中で当初から決めていた期限は3年ではなく、最長2年になった。

この日を境に、米国公認会計士の受験勉強は、また一段ギアを上げることになった。いままでも、仕事が終わったら、毎日、梅田で夕食をかきこみ、19時頃から22時まで自習室で勉強していたが、それでも時間が足りなくなり23時まで、梅田のコーヒーチェーン店で過去問演習をしていた。23時になると梅田近辺のコーヒーチェーン店は一斉に閉まる。それで仕方なく家に帰る、そのままバタンと寝る、という毎日だった。仕事と、勉強で、疲労の極限だったが、辛いとか大変だとは全く思わなかった。一つの目標に向かって邁進しており、むしろ充実していると感じていた。

 

完結編・米国公認会計士取得までの道のり

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