過去と他人は変えられない
今だからいえることではあるが、1回目の職場復帰前に「肯定的なセルフイメージ」ができていたら、再発という残念な結果にはならなかった可能性は十分にあると思う。それほど「肯定的なセルフイメージ」というのは私にとっては重要なものだったと考えている。
「肯定的なセルフイメージ」の作り直すのに重要なのは、後ろを振り返らない、ということである。つまり、過去を見ない、ということである。
「肯定的なセルフイメージ」というと、いままでの自分を振り返って、確かに自分が間違っていたことも多かったけど、こんないい面もある、こういう肯定的な見方もある、と反省しながらも、肯定的に自分を見つめなおして、自分もいいところある、というように自分を肯定していくという感じを想像されるかもしれない。
しかし、私が「肯定的なセルフイメージ」の再構築のために心がけたのは、徹底的に後ろを振り返らない、ということである。
それは、極端な例でいえば、私が休職することで迷惑をかけてしまった職場の同僚にも、もう過ぎたことなんだから、もう申し訳なく思う必要はない、と言っているわけでは決してない。私が言いたいのは、「肯定的なセルフイメージ」を作り直したかったら、もう今後、過去にフォーカスしない、と決意することが効果的だ、ということである。
メンタル疾患で休職になると、休職中、私の場合は「あの時どうしていればうまくいったのだろうか」「あの時は失敗してしまった」「せっかく会社から期待してもらったのに期待に応えられなかった」などということを何十回、何百回と繰り返し繰り返し考えていた。
「あの時適切な対処が分かればやっていた」し、「あの時失敗した事実はもう変えられない」し、「本当に期待されてたの?会社が都合よく使おうとしただけじゃないの」と別の解釈もできるのに、何十回、何百回と繰り返し思い悩むのは、要は意識が過去にフォーカスされているからだ。
過去はリセットできないが、今後、過去にフォーカスしない、と決意することで、自分の意識の中では、過去はリセットできる。変えられない過去を悔いるよりも、現在と現在を通して変えられる未来にフォーカスするだけで、自分に対する肯定的なイメージは格段に作りやすくなるのである。
もっといえば、過去の自分でもこんなにすごいところあったじゃん、いろいろすごいことも成し遂げてきたじゃん、といった過去にフォーカスするセルフイメージは、職場復帰するともろくも崩れ去る危険がある、それどころか、自分を傷つけかねない。むしろ諸刃の剣だ。
何カ月も休職した状態で、いざ仕事、となって100%の勢いで仕事に臨めば確実にダウンする。通常は専門医や会社の人事のガイドに従って、徐々にならしながら復職するのでそんなことは少ないだろうと思うが、それでも最初は過去の自分の状態やパフォーマンスとは程通り状態で復帰するのだから、過去の自分と現在の自分を比べてしまったら落ち込むことのほうが自然だろう。