休職中にクリニックを替える、という冒険
有休を使い切り、人生初の休職に突入した。そしてこの休職期間中に自分としては思い切った決断をした。通院中のクリニックを替えたのである。
メンタル疾患の治療中にクリニックを替えるのはなかなか勇気のいることだった。かなり迷ったが、その選択を後押ししたのは、当時の先生が私の職場復帰に前向きではなかったからだ。(ただ、それはメンタルヘルス医療の専門家として真っ当な判断をされていた、ということがあとになって分かる。)
その時の精神状態が尋常ではなかったということもあるが、「このままずっと職場復帰できない、引きこもりになる」という強迫観念に日々さいなまれていた。本当に最悪な精神状態だった。今思い出しても背筋が寒くなる。とにかく一日中ずーっと不安なのである。
そんな時、父親がクリニックを替えたらどうだと提案してくれた。診療内容がどうのこうのという理由ではなく、前に通っていたクリニックが街外れにあり、自宅からも往復1時間は余裕でかかるところにあったので、評判がよくて、中心部の便利な位置に立地して通いやすいクリニックがあるぞ、と教えてくれたのだ。
早速、ホームページ見てみると、「当クリニックでは、少ない薬での治療を提案し、市内で唯一カウンセリングを治療に取り入れています。」とかいうような感じの文言があって、「薬少ない+カウンセリング=体に影響少なそう・・」、というような、何かよさそうなイメージが勝手に私の頭の中に湧き上がってきた。
思い切って替えてみたら状況を打開できるかもしれない、そう思って予約の電話をしてみた。評判の良いと聞いた名物院長の予約は2週間後だった。どうせなら院長の診察を受けたいと思ったが、評判のよいクリニックとはそんなものなのかと驚愕した。何しろ、前のクリニックでは予約診察など一度もしたことがなかったからだ。
「~でもよければ」といわれている副院長
こちらが絶句していると、電話口の相手が、「副院長でもよければ、予約なしでも診察できますよ」というではないか。同じクリニックで働いている人間に「~でもよければ」といわれている副院長という人物は何者なんだろうか、と一瞬気の毒にも思ったが、反射的に、では結構です、と言って電話を切った。
結局、どうしてもクリニックを替えるという強い意志は、その時はなかったのだ。強い意志があれば、2週間待ちでも院長の予約を取っていただろうし、「~でもよければ」といわれている副院長の診察でもいいから、すぐにでも診察を受けたいと思っただろう。
その後、縁あって私はこのクリニックに転院する。それが、私と「~でもよければ」といわれている副院長との長い付き合いの始まりになるのである。